概要
同分科会では,新型コロナウイルスが教育に与えた影響に関するトピックについて,ソウル大学のMoonyoung Eom先生と京都大学の開沼先生による報告が行われた。報告の後には,両大学の教員を中心に議論が行われた。
分科会は,参加者の簡単な自己紹介から始まり,Moonyoung Eom先生による報告(韓国語)と質疑応答,開沼先生による報告(日本語)と質疑応答,司会の南部先生による議論のまとめで締め括られた。
分科会の内容
2.1.ソウル大学 Moonyoung Eom先生の報告
Moonyoung Eom先生は,釜山の中学生を対象都市とし,コロナ後の中学生の精神健康上の問題を検証した研究について報告した。結果,中学生の精神健康はコロナ禍の後に悪くなっており,人間関係が影響していることが明らかとなったと述べられた。コロナ禍で学校に行かずに家庭で勉強するようになり,コロナ禍以前からの親子関係のあり方がより顕著になった,つまり親子関係が良かった家庭はより良くなり,悪かった家庭はより悪化したと報告された。 質疑応答では,用語の確認やジェンダー差があったかについて質問と回答があった。また,コロナ禍における日本の大学生の精神面が多様であったという研究に言及し,韓国の中学生にも多様性があったか質問と回答があった。
2.2.京都大学 開沼先生の報告
開沼先生は,新型コロナウイルスが日本の教育政策に与えた影響に関する研究について報告した。2023年度までに一人一台の端末を整備する「GIGAスクール構想」が,コロナ禍の対応として2020年に前倒しすることが決定され,2022年には一人一台端末が実現した。この教育政策は,それまでの定率補助とは異なり,定額補助で実施されたことで高い効果を得たと報告された。
質疑応答では,日本におけるデジタル教育への転換の程度や教員のITの活用の程度,「GIGAスクール構想」の政策の満足度についての質問があった。
おわりに
分科会の最後には,南部先生が議論の総括を行った。日韓からの報告には,教員のあり方と家庭のあり方に焦点が当てられていることが共通点として挙げられた。それぞれの報告のテーマは異なるが,共通の課題に向けて今後の議論の手がかりになる実り多い分科会であった。