講演の要旨
太平洋戦争前のブラジル日系社会は、帝国の飛び地、国民国家ブラジルを形成する一つの移民コミュニティという二重の性格を帯びていました。したがって、ブラジルの日系移民子弟教育においても、日本的教育とブラジル公教育が並行して発展しました。本講義では、1930年代後半に全盛期を迎えたブラジル日系小学校教育を概観し、そこで行われた日本的教育の実践を紹介します。特に、ブラジルのナショナリゼーション政策が進められた当時、日系小学校において、スポーツや銃後運動、修学旅行を通じて、日本的教育が展開していく様子を確認します。そして、日本とブラジルの二つの近代化の連動を見たとき、日本的教育文化がどのような歴史的意味を有し、どのような問題を喚起するのかについて、考えてみたいと思います。