講演の要旨
比較教育学の歴史は、自らの国や社会の教育を改善するために、他の国や社会の教育に関する思想・制度・実践などを分析することから始まっている。グローバル化の進展が目覚ましい今日、「教育モデル」の借用や貸与が国や社会の間でどのように起こっているかを明らかにすることは、比較教育学において重要な研究課題である。グローバル化には、統合や標準化を推し進めると同時に、分断や多様化をもたらすという、相反する性質がある。そのため、教育の借用・貸与を通して、そのような複雑な現象がいかにして起こっているかを理解することが不可欠である。そこで、本講演では、EDU-Portニッポンなどを例として挙げながら、教育の借用・貸与がどのように先進国と途上国の間で起こっているのかを論じる。その際、「知識外交」という概念を適用しながら、近年の国際教育協力のあり方について考えてみたい。